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中村草田男を読む126〜130(『萬緑』1〜5)

126/banryoku 1

句集『萬緑 
昭和十四年 

冬蒲團妻のかをりは子のかを
1939年
38歳
鑑賞日
2006/2/25

 ほのかなエロスと生活臭。妻子への愛情と家庭生活への愛着。


127/banryoku 2

句集『萬緑 
昭和十四年 

無花果壊え落ち白面詐欺漢前歯なし
1939年
38歳
鑑賞日
2006/2/26

 〈壊〉は[く]とルビ

 この句を挟んで次のような句もある

其銀で裘(けごろも)なと得よ和製ユダ
かの詐欺漢冬立つ街に今日いかに

 草田男の年譜よれば昭和十三年に「ある友人のため金銭問題の累を及ぼされ、一年余も心労する。」とある。このことで『火の鳥』に有名な句「金魚手向けん肉屋の鉤に彼奴を吊り」を書いている。同じころの句であろうか。「金魚手向けん・・」では怒りが昇華された形で書かれているが、この三句などはその人物にたいする憎悪が生な形で出ている。このような憎悪や怒りなどの気持ちを句の形にしてゆくというのも、心が整理されてくるというところで意味のあることであると思う。


128/banryoku 3

句集『萬緑 
昭和十四年 

牛はしづかに冬の大きな耳を對けぬ
1939年
38歳
鑑賞日
2006/2/27

 ゆったりとした牛の存在感とでもいおうか。好きな句である。


129/banryoku 4

句集『萬緑 
昭和十四年 

すつくと狐すつくと狐日に並ぶ
1939年
38歳
鑑賞日
2006/2/28

 狸などとは違って狐にはしなやかさや神秘性のようなものがある。その狐がすっくと日に並んでいるという風景に魅かれる。このような場面を見ることがあるのだろうか。


130/banryoku 5

句集『萬緑 
昭和十四年 

闇の林檎噛み噛み餓ゑは若々し
1939年
38歳
鑑賞日
2006/3/1

 青春。あるいは青春性への憧れ。この若々しい感性をいつまでも保っていきたいものである。草田男も私も。
 「闇の林檎」というのが上手い。水分が滴ってきそうなみずみずしさがある。また旧約聖書における原罪というようなことに想像を膨らまして味わうのも面白い。

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